目次
Official髭男dismさんの「イエスタデイ」は、映画「HELLOW WORLD」の主題歌です。
Official髭男dismさんの曲は他にもテレビドラマや映画の主題歌として採用されている曲も多くあります。
作詞をされている藤原聡さんが、ドラマや映画の内容をどれだけ曲に反映されているかは存じ上げませんが、ある意味では映画のテーマにも普遍的なものが含まれていることを考えると、詩の内容とリンクすることが多々あることは推察出来ます。
私自身は映画「HELLOW WORLD」を観ておりませんので、ただ単に「イエスタデイ」の詩から受けた印象を述べさせて頂きたいと思います。
何度失ったって 取り返して見せるよ
雨上がり 虹がかかった空みたいな君の笑みを
例えばその代償に 誰かの表情を曇らせてしまったっていい
悪者は僕だけでいい引用元:Official髭男dism「イエスタデイ」 作詞:藤原聡
何度でも取り返してみせる「君の笑み」とは誰の笑みなのか?
そんな疑問が生じますが、その前に“何度でも”というフレーズが気になります
DREAMS COME TRUEさんの「何度でも」
Mr.childrenさんの「HANABI」にある
“もう1回 もう1回 ~ 何度でも 君に逢いたい”
これらの曲に出てくる「君」とイエスタデイの「君の笑み」の「君」は 近似または同一のものなのだろうか?
雨上がり虹がかかった空 と 誰かの表情を曇らせても構わない
この詩は「雨上がり」と「曇らせても」の対比で「君の笑み」の尊さが際立っています
さらに「悪者は僕だけでいい」部分からは
中島みゆきさん作詞の「空と君のあいだに」ある “僕は悪にでもなる”を思い出しました
“君が笑ってくれるなら”と“君の笑み”という共通点も気になるところです
本当はいつでも誰もと思いやりあっていたい
でもそんな悠長な理想論はここで捨てなくちゃな遥か先で 君へ 狙いを定めた恐怖を
どれだけ僕は払い切れるんだろう?半信半疑で 世間体 気にしてばっかのイエスタデイ
ポケットの中で怯えたこの手は まだ忘れられないまま引用元:Official髭男dism「イエスタデイ」 作詞:藤原聡
“そんな悠長な理想論” を捨てねば辿り着くことの出来ない
険しく痛みを伴う 彼の地への道のり
“遥か先で 君へ 狙いを定めた恐怖”
「君」へと辿り着こうと思へども 本当にその地へたどり着けるのだろうか
そもそも「君」自身の存在も不確かで幻であるのかもしれない
そんな不安や恐怖を振り払うことが出来るだろうか
けれども衝動は止められずに 想いは振り切れる
一抹の不安は残しつつも 彼の地を目指す
「HANABI」にある「決して捕まえることの出来ない 光」だとしても
何度でも 逢いたいと 手を伸ばす どことなく似てる状況を歌っているのかと思います
「何度傷ついたって 仕方ないよ」と言って
うつむいて 君が溢した 儚くなまぬるい涙
ただの一粒だって 僕を不甲斐なさで 溺れさせて
理性を奪うには十分過ぎた引用元:Official髭男dism「イエスタデイ」 作詞:藤原聡
“儚くなまぬるい涙” この「なまぬるい」で「君」の存在が血の通ったリアルな姿として印象づけられる
ただ、その涙は 僕を溺れさせ 理性を奪うものと 比喩的な表現へと揺り戻される
「理性」では無く「衝動」が激しく突き動かす
街のクラクションもサイレンも届きやしないほど
遥か先へ進め 身勝手すぎる恋だと
世界が後ろから指さしても
振り向かず進め必死で君の元へ急ぐよ
道の途中で聞こえたSOSさえ 気づかないふりで引用元:Official髭男dism「イエスタデイ」 作詞:藤原聡
街の雑多な音も届かない程 遥か先の「君」の元へ急ぐ
“道の途中で聞こえたSOSさえ 気づかないふりで”
このSOSは何に対して誰からのSOSなのだろうか?
私自身は、自分が自分に対して発したSOSだと解します
所謂 現実の世界とは離れた場所である「彼の地」に向かう
その行為は、危険を伴う つまり自己崩壊を引き起こす惧れを孕んだ行為
そんなことに気づかぬふりで 衝動のまま突き進む
バイバイイエスタデイ ごめんね 名残惜しいけど行くよ
いつかの憧れと違う僕でも
ただ1人だけ 君だけ 守るための強さを
何よりも望んでいた この手に今遥か先へ進め 幼すぎる恋だと世界が後ろから指さしても
迷わずに進め 進め 2人だけの宇宙へとポケットの中で震えたこの手で今 君を連れ出して
引用元:Official髭男dism「イエスタデイ」 作詞:藤原聡
“いつかの憧れと違う僕でも”という詩は、スピッツさんの「君は太陽」にあるフレーズ
“理想の世界じゃないけど 大丈夫そうなんで” と似たものを感じます。
夢見て憧れていた理想の世界 言い換えるなら「彼の地」
ただ辿り着いた「彼の地」は 思い違いの「彼の地」だった
“幼すぎる恋”の歌詞は、スピッツさんの「夏の魔物」の中にある“幼いだけの密かな掟”や
「空も飛べるはず」の中の“幼い微熱”に通ずるものがあると思いました。
追い求めて来たものとは違うものであったとしても
それが「神様の偽者」であったとしても 大切なもの
感じた衝動に身を任せ 遥か先へ進み続ける
未来の僕は知らない だから視線は止まらない
謎めいた表現技法 意味深な君の気性アイラブユーさえ 風に 飛ばされそうな時でも
不器用ながら繋いだ この手はもう
決して離さずに 虹の先へ引用元:Official髭男dism「イエスタデイ」 作詞:藤原聡
定められた未来があるかなど 分からないし関係ない
ただ先、遥か先を目指し 進む
不確実で不安定な感覚 そして何かが結実するような予感
その存在を見失い 目の前から消えて無くなりそうな 危うき存在
拙いながら繋がることを止めることは出来なかった
そう この手は決して離さず 光の先へと進む
この曲「イエスタデイ」は、「覚り」の境地を書いた歌であると思います
「覚り」つまり精神世界での感覚を詩で表しています
「覚り」言い換えれば「彼の地」や「彼岸」とも言える場所を目指し進むとき
辿り着いたと思っても それは幻として 目の前に現れては消える
かといって諦めることも出来ずに 衝動に突き動かさるまま何度でも求め進む
ただ盲目に求め進み続ける 誰かを何かを犠牲にしてしまっても
自分自身が壊れてしまうかもしれない それでも構わない
やっと辿り着いた先にいたのが「神様の偽者」だとしても
そんなことはもう関係ない 微かに繋げた手は離さず
更なる高み 光の遥か先へと進み続ける
「覚り」の感覚 それが錯覚だとしても
心に深く刻まれ 輝き そして己を動かす
その光の先へ先へと 心の赴くままに進み続ける
そんな突き動かされた心を表現した詩だと言えるのではないでしょうか