米津玄師さんの「Moonlight」を私的に歌詞解釈していきたいと思います。
解釈する上で気になる言葉、「あなた」「わたし」「地獄」「本物」「偽物」があります。
「本物なんて一つもない」この部分は全てを否定するかの如く聞こえてきます。
あなたこそが地獄の始まりだと
思わなければ説明がつかない
心根だけじゃ上手く鍵が刺さらない
愛し合いたい 意味になりたいどこへ行ってもアウトサイダー 夜通し読んだハンターハンター
本物なんて一つもない でも心地いい
文化祭の支度みたいに ダイナマイト作ってみようぜ
本物なんて一つもないムーンライト 爪が伸び放題 使う予定もない
差し出されたレーズンパイ
オールライト「自分の思うように あるがままでいなさい」
ありがとう でもお腹いっぱいイメージしよう 心から幸せなあの未来
イメージしよう イメージ
教えてよ そこまで来たら迎えに行くから
教えてよわたしこそ地獄を望んだんだと
認めなければそろそろいけない
自分の頭今すぐ引っこ抜いて
それであなたとバスケがしたいどこへ行ってもアウトサイダー 継接ぎだらけのハングライダー
本物なんて一つもない でも心地いい
ビニールハウスで育ったアベリア 偽物なんだってだからどうした？
本物なんて一つもないムーンライト 幽かに明るい部屋 なだからなノイズ
効き目薄いボルタレン
オールライト テーブルの向こうに 裏返しのアイフォン
今回は誰のスパイ？イメージしよう プールの底で眺める水面
イメージしよう イメージ
教えてよ 何もかも終わらせる言葉を
教えてよ鳴り止まないカーテンコール そこにあなたはいない
鳴りやまないカーテンコール そこにわたしはいない引用元：米津玄師「Moonlight」作詞：米津玄師
「地獄」の始まりは「あなた」だとすれば、説明が付く。
この「地獄」とは精神的なもの、言い換えるならば どうしようもない「閉塞感」に陥いり抜け出せない状態を表している。
抜け出すためには「心根」だけでは解決できない、他の何かがおそらく必要なのだと感じるが、その答えは分からない「閉塞感」「もどかしさ」。
どこへ行っても「アウトサイダー」、世間から離れた場所に浮遊しているかのような感覚
夜通し読んだ「ハンターハンター」、創作話 本物じゃないけど 楽しい世界
「あなた」と「地獄」どちらも本物では無い「幻想」と気付いた
そう思う事すら本当の事では無いのかもしれない
何故だか、この「閉塞感」を楽しむかのような心地よささえ感じる
「ダイナマイト」のくだりは、梶井基次郎の短編小説「檸檬」が想起される
レモンを爆弾に見立てて空想をめぐらせるという内容だ
得体の知れない「憂鬱」な心情を描いた部分も「地獄」の「閉塞感」に通ずる。
爪の使い道は分からないが ギターを弾く人が伸ばしていたりすることがある
野生動物であれば 爪を研いで獲物を捕獲するのに使うであろう
差し出されたレーズンパイは「自分の思うように あるがままでいなさい」という
ありきたりな説教じみた言い回された言葉の喩え
もう聞き飽きた そして「お腹いっぱい」
この閉塞感から逃れ先にある幸せのイメージ
やがて辿り着く未来をイメージしよう
心根だけでは辿り着けない幸せな未来
近付いた時は教えてよ 迎えに行くから
この地獄のような行き場の無い現状は
きっと「わたし自身」が望んで迷い込んだ結果だと
そろそろ観念して認めなければ 先へ進めない
考えすぎで言葉に詰まるような自分に嫌気がさす
いっそ頭を引っこ抜いて思考停止
その頭で「あなた」と陽気にバスケでもしたい
どこへ行っても「アウトサイダー」、世間から離れた場所に浮遊しているかのような感覚
継接ぎだらけの「ハングライダー」、傷ついては修復することを繰り返し 飛び続けようとする心
ビニールハウスで育ったアベリアは偽物だという人もいる
本物なんて何一つ無い そう気付けば そんなのだからどうしただよ
自分自身も本物だって 胸張って言えるのかい
月明かりで幽かに照らされる部屋の中 なだらかなノイズ
この痛みを和らげる薬も無く 単なる気休め程度
テーブルの向こうには裏返しに置かれたアイフォン
今回は誰のスパイだろうか？
スパイをしたって本物なんかに辿り着きやしないのに
イメージしようプールの底で眺める水面
実際には眺められない場所でも想像して視点を変えて
イメージしよう
本物の無い偽物だらけのこの「地獄」の堂々巡り
その輪廻を断ち切る言葉があるならば 教えてよ
そんな望みも淡く消え去る虚構の世界
そんな舞台の幕は下り 鳴り止まないカーテンコール
そこには あなたも わたしも いない
未だに 本物なんて一つも無い
「地獄」を漂い彷徨い続けている