契約が済んだ後、話したいことがあるとコーヒーショップで話すことになった。
普段は会うことが無い為、何か要求がある時はいつも「この後、ちょっとご相談が」と切り出されることが常であった。
彼は主張する際に「友人に話したら、みんなおかしい騙されてるんじゃないか」と言われたと言う。みんなが言っているということで、自己の主張の正しさが担保されると思っているのだろう。
この時点で、周囲の目線も気になって来る。
会話を聞けば、みんなおかしいと言っている事をこの男は相手に是正せよと迫っていると周りの人は単純に思うだろう。
相談したら、社労士もそう言っている、弁護士も言っているなど 第三者を持ち出して正当性をアピールする手法はよくある常套手段である。
話しが進むと、前述の「みんなが言っている」のお墨付きを受け、饒舌に要求を強めて来る。
周囲も耳を立てて会話の行方を気にしている様子だ。
「私を騙したんですか?」「騙される方が悪いとでも言うんですか?」と刺激的な言葉が吐き出される。
「騙される方が悪い」いや「騙す方が悪いに決まっている」と普通の人はそう考える。
周囲の人は、彼はこの人に騙されたのだと思うことは必至である。
相手が周囲の目に耐え切れず、「周りに迷惑だから場所を変えて話しましょうか」とカラオケルームに誘うのが彼の得意技、そして弱弱しい被害者から豹変するのである。
実のところ周囲の目を気にしているのは被害者面をした彼の方である。
周囲の目を味方に付けるために、被害者を装う「みんな言っている」「騙される方が悪いとでも言うんですか?」への対処法として私は以下の通り対応しました。
「みんな言っている」の「みんな」とは何人ですか?そして正しく説明しましたか?自分に都合よく説明していませんか?と問いただしました。
実際、当該内容については事前に何度も説明した内容で、別の選択肢も提示した上で彼自身が選んだ事であり、騙すようなことは無い内容であった。
具体的には、経費にあたる費用を売上から一定の率控除してを払うパターンと経費部分を毎月払いその代わりに売上はほぼ全額受け取れるというパターンである。
最初は経費は会社持ち、売上から一定の率を控除して報酬を支払っていたが、それに文句を言って変更させたのは彼自身である。
彼の要求は経費は会社持ち、売上は全部よこせという内容である。
彼は友人に「経費が自腹」とだけ伝え、友人はそれに対して「おかしい」と言ったのである。
彼が都合よく友人に説明をしていること、過去に何度も説明していること、彼自身から要求して現状となっていること、彼の要求自体がおかしいことを説明して それでも彼の要求が正しいと言うなら反論して下さいと諭しました。
相手は都合よく言葉を紡いで来ます。それを詳細に紐解き、ミスリードされている部分を指摘することにより、正しい方向に是正して議論することが必要になります。
周囲の視線を気にして、言いたいことを言えない。そんな事にならぬように相手の言動はこちらへの悪意が含まれる場合が往々にしてあることを考えて、心理的に動揺しないよう対応しましょう。
「騙される方が悪い」と思っているのは「騙される方が悪いとでも言うのですか?」という言葉で周囲を欺いた彼自身なのかもしれません。